動物を描こう③~恐竜で学ぶ印象的特徴の付け方~part2
カテゴリー: イラスト
皆様どうも、こんにちは。 CG部の蜥蜴の尻尾と申します。 2編4回連連載・動物の特徴と描き分け最終回ということで、動物の知識とそこから学べる印象操作を用いて、具体的に描き分けを行ってみたいと思います。
もっと細かな描き分けの具体例
最後に、お題のコエロフィシスくんに近い動物との比較に関しまして、パーツを絞って見ましょう。描き分けに使える要素が減れば減るほど、先ほど述べたイメージによる特徴づけが大きく影響してきます。
手や足ではさすがに特徴的なパーツを持つものを除いて差が無い場合がありますので、一番大事な顔で比べてみましょう。初めにやった様々な動物との比較の、より分野を絞ったバージョンです。
新たに3匹の肉食恐竜の顔を描いてみました。
①コンプソグナトゥス
②バリオニクス
③ディロフォサウルス
どれも有名な映画やゲームなどに出演…もといコエロフィシスといくらか共通点を持つ恐竜です。
ティラノサウルスなどは並べてしまうと全く別物ですので、敢えて似た方向性で固めてみました。
比較による差異の描画、印象付けの具体的な部分を紹介します。
①コンプソグナトゥス
いきなりですが最難関です。シルエットを見ての通り、輪郭にまともな違いがありません。
ハトくらいの大きさしかないという、小さいことを最大の特徴にしている恐竜で、それ以外には外見上これといった個性を持ちません。華奢なスタイルもコエロフィシスにそっくりです。
ではどう描き分けるのか…印象勝負です。ずばり、小さい=子供っぽく、どこか可愛らしい雰囲気を出すことで差別化を図ります。背景などがあればサイズ感による印象操作ができますが、今回はあくまで顔だけで勝負してみましょう。
◆動物において、子供らしくみせる代表的な要素
・目を大きく描く
・手足、尾を短く描く(今回は省略)
・曲線を滑らかにする
・歯や角などの本数を減らす
コエロフィシスも小型な為3つ目がほぼ死んでますが、より角を取るように、やわらかくしようとして描きます。
目はやはりとても大きな要素です。目を大きく(爬虫類であれば、より顔から飛び出すように)描くことで一気に幼くなります。逆に、目を小さく描くと大きな動物に見せることができます。深海生物などの例外はありますが、小さな生物に比べて大きな動物の方が、顔全体の面積で目の占める割合が小さくなる傾向にあります。
また、爬虫類独自の要素として、
・喉を膨らませる
というものもあります。これはほぼ趣味の領域の知識ですが、カメやトカゲ(特に大型種の少ないヤモリ)は小型の種類ほど喉が膨らんだりしぼんだりする挙動が目立ちます。
理由は内臓の都合だったり色々あるわけですが割愛します。
喉がぷっくりしている方が前述の可愛らしさにも繋がるので、頭の片隅に残しておくと使えるかもしれません。え?可愛くない?そう…そうですか……
②バリオニクス
かの有名なスピノサウルスのご先祖家系です。スピノと同様、ワニ顔と評される魚の捕食に適した顔が特徴です。
上で少し触れましたが、コエロフィシスの上顎にもくびれがあります。ラプトルなどと比べないと気付きもしない箇所ですが、これが発展した姿がバリオニクス達のワニ顔であると言われています。
イラストに使えそうな言い方をすれば、同じ特徴の強弱による差が出ている組み合わせと言えますね。
◆描き分けに使える特徴
・目から鼻先までの距離(吻)がさらに長くなっている
・しゃくれの個所が増え、より深くなっている。
・歯が長い
以上の三点は魚を食べる動物に多い特徴です。覚えておくとモンスターデザインなんかにも使えます。
とはいえ、体格はコエロフィシスの3倍、家庭用自動車ほどもあり生物学的にも決して近しい存在ではないため、一目見て似ていると感じる個所は多くないと思います。
まず、印象としてゴツいと感じられたのではないでしょうか。
そこで、画像内の黄色とオレンジに着目してください。
・大きな頭を支える太い首
・顎の筋肉
この特徴は、身体の大きな動物に多く見られる特徴です。
肉付きが良くなってがっしりとした印象になるので、軽快なコエロフィシスとは第一印象から変わってくるわけですね。
③ディロフォサウルス
とさかという特徴オブ特徴を備えている動物がやっと出てきましたね。
もともと個性的な恐竜ですが、某映画の影響でエリマキが生えていたり架空の要素を盛られがちで属性過多な恐竜です。
が、なんと彼はコエロフィシスの直属の血筋とされており、今回ならべた恐竜たちの中で最も近い親戚にあたります。とさかに目を奪われてしまいがちですが、とさかを消してみたら意外にもそっくりなことがお分かりいただけると思います。
顎のくびれやヒョロっちい顎、ここではあまり見えませんが細長い首も健在です。
とさか以外には、むしろ明確な差がほぼ無いと言っても良い組み合わせなのです。飾り物は偉大ですね。
…しかし、実は体格に結構な差があり、ディロフォは華奢ながら全長はバリオニクスに並ぶ7mという巨体を有しています。大きさから来る迫力の差を加えて、さらに印象を変えようとしたのが上記のイラストです。
バリオニクスと同様に大型化の証として首の筋肉を強調、そしてコエロフィシスと比べて目を小さく描いています。
これはコンプソグナトゥスの項で解説した、体格と目の大きさの話と全く同じ理屈です。今度はコエロフィシスが幼く見える立場になったわけですね。
同じような動物内における、特徴に基づいた描き分けはこのような感じでしょうか。
理屈も織り交ぜて説明しようとするとどうしても知識の羅列になってしまいますが、なんとなくでイメージしながら描く分にはそこまで本格的でなくとも大丈夫です。
総まとめ
動物のイラストでその動物と分からせる為の特徴は、
・他の動物にとの比較によって見出せる差異
・その動物を見た時に感じる印象を表現するイラスト技法的な印象付け
この2つであらわすことが可能です。
まずは比較を重ねて動物を見る簡単な知識と目を養っていただければ、細かな描き分けへの道もぐっと近くなるのではないでしょうか。
専門的な内容がメインとなってしまいしたが、実際描く時には、「こいつはこんなイメージ」という漠然とした感覚だったりします。特に印象付けの項目に関しては、キャラなど他ジャンルの知識を使ってみてもよし、色々パターンを変えつつ落書きしてイメージに合う表現方法を編み出してもよし。そもそも特徴をつけるという考え方自体、学術的な概念を無視してしまっているようなものですから、ぜひ自由な遊び感覚で触れてみていただければと思います。
さて、今回の記事では具多的な特徴として以下のようなものを紹介いたしました。
●爬虫類と哺乳類の顔の違い
・吻の長さ
・口を覆う皮膚の有無
・頭部の高さ
・目の位置(角度)
●肉食動物と草食動物の顔の違い
・歯の形状
・口の可動域
●体格の差による表現の違い
・輪郭の滑らかさ
・目の大きさ
・筋肉の強調と部位の太さ
・歯などの突起物の数
●魚を食べる動物に多い特徴
・長い吻
・くびれのある顎
・長い歯
動物を見た時無意識に認識しているようなものからただの雑学に近いものまで様々ですが、こう言った要素が見る人の印象を左右したり絵やデザインに説得力を与えます。
そして、このような印象の操作、生物的な説得力は、本文中でもたびたび出てきたように実在の動物以外のものを描く時にも大いに役に立ちます。
相変わらず知識の要る内容になりますが、次は実在しない生物すなわちモンスターの類を描く時のデザインの仕方や、イメージする印象の付け方を、動物の知識を用いて解説できたらと思っています。
最後まで閲覧ありがとうございました!