動物を描こう③~恐竜で学ぶ印象的特徴の付け方~part1
カテゴリー: イラスト
皆様どうも、こんにちは。 CG部の蜥蜴の尻尾と申します。 2編4回連続動物イラストのお話という事で、前回前々回に続いて特徴に関するお話をさせていただきたいと思います。 今回は、調べたままにイラストで再現する特徴の描写とは異なり、描き分けや差別化のための特徴付けに関して私なりの意見を描いてみたいと思います。
印象を使ってもっと差別化してみよう
前回は、特徴の見つけ方調べ方についてざっくり解説させていただきました。
比較を重ねて、極論で言ってしまえば知識を付けることが描き分けの上で一番大切なのですが、ことイラストに関しては表現技法というものが存在します。
迫力を出すための構図であったり、キャラクターの内面まで伝わるようなデザインだったり…
それらと同じように、動物の場合もその動物に対して無意識に抱いているイメージを表現して他の動物と差別化を図ることが出来ます。
もしくは群れなんかで同じ動物を複数匹描く際は個体差・個性を出すためにも使えます。
キャラクターの個性と同じ考え方ですね。
今回は、分類学的に見てさらに近い動物たちを如何に印象付けて描き分けていくか、前回説明した比較で見出せる特徴と併せてお話したいと思います。
前回以上に資料となっている恐竜内でのお話が多いですが、よろしくお願いします。
特徴を「つける」
さて、特徴の見つけ方調べ方については前回ざっくり解説させていただきました。
分かりやすさを重視して、比較の項目では完全にシルエットの異なる遠い動物を並べましたが、実際の所は多くの動物にそっくりさんがいるものです。要するに、近い生物同士の比較からその差異を見つけてイラストに落とし込まないといけないわけです。
それでは、肉食恐竜内に絞ってこれは「コエロフィシス」だ、と決定づけるための具体的な特徴を見ていきましょう。
◆「コエロフィシス」の特徴
・脚が短めで胴長、全体で見て背が低い印象を受ける。
・顔はかなり細長く首も長い。
・尾が長くフニャフニャ曲がる(ラプトルなど有名な恐竜の多くは、尻尾が固定されておりしなる動きができない)。某映画等では意外と無視されているのはナイショ。
・ガリガリ
・上顎先端手前辺りがしゃくれている。
(配色や質感については、元から不明なので触れません)
具体的に列挙するとこのような感じです。
いわゆる動物の分類の中で最も細かい単位に近づいていますので、区別するための要素もかなり細かくなっていきます。
文章で見ると難しく感じるかもしれませんが、これらも資料画像を見て感じたままの特徴です。細かい部分を見る時こそ、動物の構造の土台の理解が役に立ちます。
では、文章だけでは実感のじの字も沸かないと思いますので、実際に似たような恐竜と見比べてみましょう。
某映画シリーズを見たことがある方なら、コエロフィシスを見てまず思い浮かべたのはこちらの恐竜ではありませんでしたでしょうか。はい、脚の爪が特徴的なラプトルくんです。
スレンダーな体系等、特徴的な爪以外は似たような要素で構成されるラプトル(今回のイメージはディノニクス)ですが、主な違いを挙げると上記のようになります。
全体的には、ラプトルの方ががっしりとしていて背が高く、引き締まった印象になります。鍛えた体してんなこいつ、みたいな感じです。全体的に言うと非常に曖昧ですが、細かい描き分けを重ねることで差別化することができます。
また、先ほど言ったような全体のイメージも大事にしましょう。
たとえば、「ラプトルはコエロフィシスより鍛えててゴツい」という印象があったとしましょう。
キャラクターの描き分けと全く同じ要領で、
・より筋肉質に
・曲線の中にも角を立たせる
といった微妙な要素も、描き上げた時には印象を変えてくれます。これらは具体的に言葉にするのは難しいと思いますが、認識・意識するだけでも変わってくると思います。
慣れてきたら是非、特徴を探す時と同じ要領で「どうしたらイメージするような印象にできるか」を模索していただけると良いのかなと思います。
骨格の時と同様、基本に立ち返って「人間のキャラならどうするか」という見方で探してみると、色んな情報が拾えるかもしれません。
これは特徴を見つけるというよりも、「特徴をつける」と考える方がしっくりくるかもしれませんね。
イラストの中では多少のデフォルメや強調表現が入るもの。図鑑や論文のように事実を一寸違わず示すようなイラストを描くのでなければ、分かりやすい武器になりますのでバシバシ使ってしまいましょう。
次回はいよいよ大詰め、この3回にわたってお話した動物の知識とそこから学べる印象操作を用いて具体的に描き分けを行って行きましょう。
ではまた次回!